グレコ3兄弟&フロイドローズについての考察

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 さあ、次は「妹」の検証&調整であります。

 いや〜、わたくし、ギターは赤と決めていたのですが、白にプラックパーツというのもなかなかよいものですなぁ〜。コイツはちゃんと白のストラップも付いてきましたよ。

 写真だとわからないですが、ヘッドは真っ白なのですが、ボディーその他はやや黄ばみがかっています。

 フレットの減りはほとんどなく、あまり使われていなかった様子。

 カバーやブリッジなどで隠れていたところは、汚れがたまっていますが、いつもの魔法の水ですぐきれいになりました。

 パーツ類はすべてオリジナルのままです。18年選手の割には美品の方でしょうね。

 まずはいつもの通り、ブリッジのお掃除です。

 バラしてみると、1、2弦のサドルの裏のふたが欠品でした。ん〜、普通の使い方をしていてここのパーツが無くなる事は無いはずなのだが・・・・(^_^;)。これが無いと、弦を止めるインサートブロック(小さな直方体の金属)が、下に沈み込みすぎるのですが、弦を張るときちょっと気をつけてやれば、まぁ、問題なく使えます。後でヒマな時にアルミの板から切り出してフタを作ってみましょうかね。

 ブリッジはオリジナルの、GRECO G-FORCE でありますが、このブリッジ(他社のものでも同じものがけっこうありますが・・)の唯一の不満点が、アームの回転のテンションの調整の仕方であります。

 ブリッジプレート裏のネジで、調整するのですが、アーム野郎の要求としましては、軽く回りながらも、まわしたその位置できちんと停止していてもらわないと困るのですねぇ〜。通常は弦側に向けてアップダウンする訳ですが、反対側(ボディーのお尻側)に向けといて、たたきはじいたり、ボディーに指をかけて、目一杯アップさせたり、また、使わない時は邪魔にならない位置にいて欲しいのでありまして、この回転のテンションの調整ってけっこう大事なのです。
 しかし、そのネジが写真のような位置に着いておりまして、ブリッジを装着した状態で調整するのは、けっこう大変なのです。裏のパネルからラジオペンチを差し込んでつかんでおきながら、ボディ前をスパナでまわす、ってな難儀な状態なのですよ。せめてネジを六角にでもしていてくれれば、ボックスレンチを突っ込んで作業できるんですけどねぇ。


 さてさて、それでは弦を張って試奏でございます。音はやっぱり「兄」「弟」と同じ。しかもコイツもはじめから、こちらの思い通りに「哭いて」くれます。アームも滑らかで、おー、純正パーツも悪くないなぁ〜・・・と思っていたのですが、アームアップがあまり上がりませんねぇ。3弦12フレットで、1音半ぐらいしかあがりません。ダウンもなんだか弦がベロベロになるまで下がらない。あれ〜、元はこんなんだっけか?とブリッジを眺める。

 ブリッジの支点の位置が低いのかな?と、写真を撮って見比べてみました。

 ゴールド化する前の兄の写真があったので、見比べてみると・・ん〜、確かにちょっと低いかも・・。でも弦高はちょうどいいしなぁ・・・。

 さて、となると、あといじれるのは・・・・。
 禁断のネック取り付け角度調節へと参ります!(良い子はまねをしないでね!)

 ネックを外してみると、おー、こんなところにモデル名が書いてありましたねぇ。もっと見えるところに書いておいても良いのにねぇ。私も「グレコのギター」としてしかわからなくて、ネットを探しまわってやっと「NYS-65」という名前がわかったのだよねぇ。

 さて、ネックを外しますと、上の写真の様に、紙のようなスペーサーが入っております。「一度外してみて」とは言いませんが、たいていのギターにはこんな感じのスペーサーが入っております。そういえば、うちにはデタッチャブルネックのギターしか無いなぁ〜。そしてほとんどのギターは一回は外してますなぁ。ロックナットのナットの下にも、たいてい紙のようなスペーサーが入っています。これによって高さやネックの角度を微妙に調整しているんだと思いますが、この作業っておそらく職人さんの感と経験による手作業だと思われますので、素人はあまりいじらない方がいいと思いますよ(・・・って、私もシロートなんだけどね)。
 で、このスペーサーの上に、手近にあった付箋紙を二つ折りにして重ねました。また、段が付くのも嫌だったので、この場所よりややネック側に、同じ付箋紙を折らずに1枚のまま入れてみました。

 結果は・・・ブリッジの高さを差調整すると、おー、2音ちょっとぐらいまで上がる様になりました。さらになんだかボディーの鳴りも良くなったような・・・(気のせい、気のせい・・)

 アップはオッケーですが、ダウンはもう一つ物足りない。しかしこれは意外と簡単に解決できるのでありました。
 アームバーをもっと角度のあるものに換えてしまうのです。

 スプリング同様、アームバーの形ってのも千差万別なんですよねぇ。上の写真では、上がグレコ純正です。で、下の先っちょが上に曲がっているヤツに取り替えました。これだけで、アームの操作感はかなり違ってきます。コイツに取り替えたところ、弦がベロンベロンになるまで、楽に下がる様になりました。・・・(って、実際の演奏でそんな必要ってあんまりないんですけどね。(^_^;))

 これにてすべて解決!白い「妹」も「兄」「弟」と、違和感無く持ち替えて弾ける様になりました。(^○^)

 


 さて、ちょうどいい機会なので、フロイドローズ式のチューニングロックシステムに付いて、私なりのうんちくをばひとつ・・・。

 トレモロアームの代表格と言えば、ストラトに付いている、シンクロタイプですが、フロイドローズは、基本的にはこのシンクロタイプを進化させたもの、といっていいと思います。

ストラトだと、アームアップはボディに固定しちゃって、ダウンだけ使うって場合が多い(フロートにしちゃうとチューニングが不安定だしね)のですが、フロイドローズは基本的にはアームアップもダウンもできるフロート状態で使います。

 下の図がイメージ図ですが・・

 弦の張力とスプリングの張力をうまく釣り合わせて、やじろべえ状態にして、止まっているという、非常に不安定なものであります。

 両方が引っ張り合って釣り合ったところで止まるという事は、どちらかの張力に変化があった時は、「それに応じて傾く」事になりますねぇ。

 どちらかの張力に変化が・・・という事は、チョーキングをして弦の張力が高まると、ブリッジは弦側に傾きます。これは目で見ていてもすぐわかりますよ。ブリッジを観察しながらチョーキングしてみてください。チョーキングに合わせてブリッジが傾くのがわかると思います。ここで問題発生!チョーキングしてブリッジが弦側に傾くという事は、チョーキングしている弦以外の弦は、チューニングが下がる事になります。ダブルチョーキングや、チョーキングしながら他の弦を同時にならしたりすると、正しいチューニングでは音は鳴りません。が・・・実際にはこのチューニングの狂いには目をつぶって、無かった事にしてしまう・・・・、というのが現状です。

 さて、チョーキングの他にも、張力が変わる場合はいっぱいあります。まずは弦が切れた時。一本分の弦の張力が減る訳ですので、ブリッジはガクンと後ろに倒れます。チューニングはめちゃくちゃになり、演奏続行不可能となります。
 また、最初にチューニングをするときも大変です。1弦が低いからと、1弦のチューニングをあげると、その分ブリッジは弦側に起きてきますので、他の弦のチューニングは下がる事になります。全部の弦をちゃんとしたチューニングに持っていくまでは、けっこう大変な作業なのであります。全体を大体のところまで持っていってから、あっちを上げてはこっちを下げて、を繰り返します。さらに、きちんとチューニングがあった時に、ブリッジがちゃんとニュートラル状態の位置(ブリッジプレートが弦と平行状態)になる様に裏のスプリングのテンションも調整しなければなりません。

 さらに、もちろん弦のゲージが変われば、当然弦の張力も変わりますし、同じゲージでもメーカーによって微妙に張力が違うときもあります。

 こうした状態を改善するものとして、裏のスプリングボックスにもう一つ別な動きのスプリングを付けて、一定の位置に強制的にブリッジを固定してしまおう!というパーツもあります。ESPの"アーミングアジャスター"と、ヒップショットの"トレムセッター"というのが有名かな?しかし、どちらも無理矢理ブリッジ位置にクリックを作るようなものなので、滑らかなアーミング、というのは犠牲になるようです。(って、実際には使った事が無いのでどの程度かはわかりません。)

 さて、こんな風に書くと、すごくめんどくさくて、イヤになっちゃいますが、一回ちゃんとしたニュートラルでのジャストピッチを作ってしまってからナットをロックすると、その後はかなりメンテナンスフリーとなります。チューニングして1〜2日は、弦の伸びがあるので安定しないですが、その後もう一度チューニングし直すと、もうほとんどチューニングしなくて良くなります。ライブや練習の前でもチューニングいらずです。2回目からの弦交換も、同じメーカーの同じゲージなら、裏のスプリングはいじる必要がほとんどないので、弦のチューニングをいつものピッチに持っていけば、自然にニュートラルポジションになります。ただ、440や441と状況によって使い分けるときは、もう一度最初から調整となります。

 さて、では、アームを使うとなぜチューニングは狂うのでしょうか?問題は摩擦抵抗です。チューニングロックというと、弦を切ってブリッジに挟み込んで・・・というイメージが強いですが、実はチューニングの狂いの主な原因は、ブリッジ側ではなく、ナット側が大きな要因となっています。

 アームダウンすると、弦はネックのヘッド方向へずれますね。(上の写真を参考に)で、アームを元に戻した時、弦がちゃんと元の位置に戻れば良いのですが、ナット部分には弦が結構なテンションで押し付けてあり、摩擦抵抗により、ちゃんと元の位置まで戻れない状態となります。これでチューニングが狂います。アームアップも同様です。

 

 上のようなストリングガイドは、されにそれに拍車をかけますねぇ。ストリングガイドをローラー式のものに換える、前述の"ナットソース"などをナットに塗るなどする事で、かなり軽減できますが、なかなか摩擦抵抗は完全に"ゼロ"にはなりませんね。"ゼロ"にならないなら、無限大にして動かなくしてしまおう!という発想のが、ロックナットになります。ナットをロックしちゃうだけで、ほとんどチューニングの狂いは防げますねぇ。事実、廉価版のフロイドローズタイプでは、ブリッジでは弦をロックしないタイプのものもけっこうあります。ファインチューニングさえ付いていれば、かなり実用になります。

 さてさて、摩擦抵抗、なんて難しい言葉が出てきましたが、他にもこの摩擦抵抗を気にしなければならない場所があります。上のやじろべえの図の支点部分、ブリッジとスタッドボルトとの接触部分ですね。ここは、スタッド側は溝の切れ込みがあり、ブリッジ側は"ナイフエッジ"と呼ばれる、鋭い刃状になっており、極力摩擦抵抗をゼロに近づけようという機構になっています。
 しかし、物理的に摩擦抵抗"ゼロ"というのはあり得ない訳でして、いくらかの抵抗があり、そのため、アームダウンから戻したときと、アームアップから戻したときとで、止まるブリッジの位置が微妙に違い、チューニングの狂いが生じる場合があります。私は前述の"ナットソース"をこの部分に塗っていますが、これだけでかなり改善でき、ほとんど気にならなくなります。CCR等を吹いても同様の効果が得られるかもしれません。
 最近は、ストラトでも、2点止めのブリッジなどがありますが、これはこの部分の摩擦抵抗を減らそうというものですね。6点止めのシンクロブリッジ用でも、接点に溝がきってあるブリッジ取り付けネジなんてのもあるようですよ。効果のほどはわかりませんが、ブリッジよりもナットの方の対策の方が重要だと私は思います。一時期"ローラーナット"なんてのもありましたが、あまり普及しませんでしたねぇ。

 さて、フロイドローズにはまだまだ問題点があります。それはブリッジ自体の質量です。上のやじろべえの図の右上に、赤丸でブリッジの質量と書いておきましたが、ブリッジにはロックのための機能やら、サスティーンブロックなど、けっこう重いものが付いています。そしてそれは支点とは離れた位置についている事になり、重力の影響を受ける事になります。
 試しに、ちゃんとニュートラル調整されたフロイドローズ付きのギターを、下の写真の様に、上向き、下向きにして、弾いてみてください。

 上に向けたときは、ブリッジが重みで下がり、チューニングが上がりますし、下に向けたときはブリッジが上がり(重力的には下がりですが)チューニングが下がります。
 実際の演奏時には、横になった状態ですので、この重力の影響は無視できますが、歯で弾いたり背中に担いで弾いたり等、ジミヘンばりのパフォーマンスをするときは、チューニングが狂いますのでご注意ください。また、ロック前に最初にチューニングするときは、寝そべったりかがんだりせず、背筋を伸ばして(?)通常弾く体制でチューニングいたしましょう。
 フロイドローズのライセンスもの等では、シンクロタイプのごついサスティーンブロックが付いているものがけっこうありますが、本家のフロイドローズ製は、小さくて薄いのが付いてますね。質量が小さい方が、この狂いは少なくなるのですが、ストラト等でよく言われる事ですが、サスティーンブロックは重いほど、弦振動がよく伝わり文字どおりサスティーンが長くなる、という話もありますし、どちらが良いのかは、わかりませんね。

 さあ、さらに問題があと一つ。なんて細かいヤツだといわれそうですが・・・・(^_^;)
 それは、実際に弦が動く場所は、やじろべえの支点からずれている、という事です。

 上の写真の通り支点はスタッドとの接触点になりますが、実際に弦が動く場所はそれよりも後ろのサドルの上となります。何が問題かと申しますと・・、オクターブチューニングです。オクターブチューニングをちゃんとしますと、サドルの位置は各弦バラバラになりますね。ということは・・・ブリッジがちゃんとニュートラル位置(ブリッジプレートが弦と平行)にあるときは大丈夫ですが、そこからずれると、弦高もバラバラにずれてしまうという事です。それゆえシビアなニュートラールポジション合わせが肝心となります。
 また、アームダウンをすれば、弦高はサドルごとにバラバラに上がりますし、アームアップをすれば下がり、弦高を低めにセットしていると、アップ時には、ピックアップやフレットに弦が触れ、音が途切れる事もあります。


 こうやって、フロイドローズタイプのチューニングロックシステムを改めて検証してみると、いろいろと問題点があり、もっと何かうまいアームシステムは無いかなぁ?と思ってしまいますが、今やチューニングロックといえば、フロイドローズ一辺倒ですね。昔はフロイドローズと並ぶ両頭として"ケーラー"というのがあったのですが、もう生産されていないようですし、フロイドローズの新たな革新を待望するところでありますね。

 とは言いましても、全世界でプロが実際に道具としてちゃんと使えているものですので、私がケチをつけてるような問題点を差し引いても、シンクロタイプよりは、何段も上の安定性があるのは事実ですね。なにしろ、うちにあるギターはほとんどフロイドローズタイプが付いておる次第でございますし。(^_^;)

 最後まで、長文お読みくださってありがとうございました。

 2005.09.19


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