70年代国産ストラト対決! AriaPRO2 vs YAMAHA

 

 今、ちょうど国産の70年代ものと思われるストラトが2本手元にありまして・・・ !
 1本は、ジャフロサンボのギタリスト、ガッちゃんに以前リペアを頼まれた、AriaPro 2 。私の押し入れから出て来たストラトと同じ MTSUMOKU 製で、例の過激な音がするヤツですねぇ。シリアルナンバーから、76年製と思われます。

 

 そしてもう一本は、ブログで欲しいなぁ・・と書き込んだら Pandora mini を譲っていただいた、かわはらさん所有の YAMAHA SR 400。正確な製造年は不明ですが、このモデルの製造時期は、'76〜'80年だそうなので、たぶん同時期の国産ストラトですね。Pandora mini のお礼に、フレットの打ち直しをお引き受けいたしました。

 

 どちらもデカヘッド時代のストラトのコピーモデルで、リッチーブラックモア全盛期の頃ですんで、リッチーになりたい!ってな私ら世代のティーンネージャーに売れ筋だったモデルですね。

 この時代の国産コピーモデルは、例の TOKAI が完璧なオールドのコピーを作る前ですので、けっこうバッタもんでして・・・(^_^;)。見た目はストラトなんですが、各メーカーが独自に勝手に作っていて、逆に面白いですね。特にヤマハは昔から独自規格で行くメーカー、って印象があります。

 


 

 さて、まずはそれぞれのリペア報告をしながら、どんな作りになっているかを確認していきますね。!

 


 

 Aria Pro 2 Stagecaster

 ガッちゃんがオークションで落としたんだけど、主なオーダーは、PUセレクターのスイッチを5段にしてほしい、という事でした。その他各部の調整・・・という事でお受けしました。

 そのスイッチですが・・・

 そうですねぇ、この頃ってこんな感じの安っぽいのが一般的でしたね。ただ5段スイッチとなると・・・

 この小振りなサイズは無く、取り付けネジの位置もレバーの可動域ももっと広いものになります。そして・・・

 ザグリのサイズも合わなく、ボディー側のスイッチの端が当たる部分を削りました。

 ピックガードもネジ穴を新たにあけ、溝を延長いたしました。

 さてさて、電気系以外のその他の部分も、けっこうバッタもんの作りでありまして・・ 

 まずボディーは、表裏も張り合わせで、表2ピース、裏3ピースの5ピースに見えます(5以上かもしれませんが・・)。つまり角材を張り合わせて作ってあるのね。(^_^;)。

 ネックの方は、一応ワンピースの張りメイプルで、デカヘッドの下の部分だけは継いであります。

 

 ネジ穴なんかもけっこういい加減な感じで上の様に、ザグリにかかってる所とかもあります。
 それと、ひょっとしたらピックガードを交換してあるのかもしれませんが、使われているネジも大きさの違うネジで止められていました。

 たぶん、古くてさびの出たネジを、ホームセンターあたりのネジに変えたものと思われます。ボディーの材質はわかりませんが、けっこう荒くてささくれ立つような木質で、ネジ穴はほとんど広がっちゃってましたので、適宜エポキシなどで補修して、手持ちの、上の写真で言うと大きくて太めのヤツの方で統一してリプレイスしました。

 他に、裏のスプリングハンガーのネジが表に貫通した跡があったり・・・・

 おそらく、太いアームを無理矢理ねじ込んで破損させたと思われる、下のようなブリッジの破損なども・・・

 たぶん、いろいろと改造を試したんだろうなぁ、という跡がありますねぇ。アウトプットの舟形ジャックもゴールドになっていたので、そこは手持ちのクローム新品に置き換えました。

 あとは、例によってパーツの分解掃除。

 ペグは緩くなっていたのがいくつかあったのですが、原因はプレート部分が曲がって、ギアの噛み合う所に隙間が出来ている事でした。力技でプレートを曲げ直し、(^_^;)、一応直りました。

 で、各部の調整に入ったのですが、アームを使うとなんだかチューニングの狂いがやたら大きい?
 普通のシンクロだから多少狂うのは普通だけど・・・裏のスプリングをいくら強くしても、ブリッジがベタ付けまで戻らない・・?なぜ?・・・・

 原因は、ブリッジを取り付けてあるネジでした。本来は上の左のような形の頭のネジが使われるはずなのですが、右のこのネジも比較的新しいので、ホームセンターあたりで普通のネジを買って来てつけたんでしょうね。
 右のようにネジ頭の下が円錐形になっていると、ブリッジの穴が微妙に干渉して、ベタ付けの位置まで戻れないんですね。

 ネジを交換したらば、普通にベタ付けまできっちり戻るようになりましたので、チューニングも安定いたしました。
 そっか!プリッジが戻らなくて、裏のスプリング調整ネジをどんどん締めていって、表まで貫通させちゃったのかな?

 その他、フレットは減りはあるものの、まだギリギリ大丈夫な感じ。ナットはけっこうヤバいけど、これもまぁなんとか。
 ま、そんなこんなでリペアは終了!ガッちゃんにもとても満足していただきました。

 

 このギターのキモは、例のピックアップですからねぇ。こんなバッタもんですが、音は最高に過激なストラトサウンドです。しかも、うちの押し入れから出て来たストラトより、若干パワーがあるように聞こえるし。(^o^)/


 

YAMAHA SR 400

 こちらのオーダーは、フレットの打ち替え。今ついているフレットはオリジナルのようですが、一度擦り合わせをしているとの事で、けっこうぺったんこですし、もともと細身なのかな?。

 上がヤマハの打ち直す前のフレット。

 こちらはアリアプロ2のオリジナル、アリアの方が太めのフレットになっていますねぇ。指板のアールは、アリアの方がきつめみたい。

 さて、人様のギターのしかもメイプル指板、って事で、いつもとは違って慎重に行きたいですね。

 いろいろとサンプルの写真を見ていただいて相談した結果、フェンダー製のスーパージャンボで行く事にしました。

 まえに赤いキルトのフェルナンデスに、フェンダー製のジャンボフレットを打った事がありましたが、あれは細身で、高さはあるもののそんなにジャンボではありませんでしたが、このスーパージャンボは、けっこうジャンボです。

 これだけフレットの高さが増しますので、ナットもそのままの高さではダメですので、ナットも交換です。これがちょっと苦労・・(^_^;)。

 フレット打ち直し、本来であれば指板の塗装を剥がして、平面を出してから打つ方が精度が上がりそうに思いますが、この30数年たった飴色のメイプルの感じはキープしたいですからねぇ。

 フレットの部分だけペーパーで整えて、指板の塗装は残しました。

 で、まぁわりとすんなり打てました。

 お次ぎはナットですが・・・・

 サイズを測ってみると、横幅が 42mm程、弦間ピッチは1〜6弦で、33mmちょっとしかない。ストラト用のナットって事で売ってるのを見てみると、たいてい幅が 44mm〜、弦間は 35mm〜くらいのが一般的なようです。42mm というナット幅は FroydRose に慣れた身としては普通のサイズですが、ストラトって大きいんだねぇ。

 で、仕入れた上の写真のものは、幅は 42mm だけど弦間は 34mm のものです。写真の通り少し広くなりますが・・・

 元のフレットは、上の写真のように、けっこう端の面取りが内部まで入っていて、1弦6弦の端にスペースがありましたので、フレットの面取り具合で、弦落ちなどは起きないように思われました。

 また、ブリッジの弦間ピッチも、実測で 10.3mm 程しかなかったです。U.S.A. ものだと 11mm、国産でも 10.5〜10.8 mm くらいが一般的だと思いますので、かなり狭くなっていますね。ヤマハは、日本人に合わせて、わざと小振りに作っていたのか?・・・かどうかは不明ですが・・.(^_^;)。
 ちなみにアリアのブリッジは 11mm、でもナット幅はやはり 42mm。

 まぁ、私、正直ストラトにはあまり詳しくないので、このデカヘッド時代の標準のサイズって、実はよくわかりませんですぅ。ただ、アリアの方は、MATSUMOKU で、この時代 MATSUMOKU はアリア以外にグレコなども作ってましたから、なんか各社共通の金型とかあったのかもしれませんねぇ。ヤマハは元々楽器製造大手ですから、パーツなども自社で生産していた事でしょうね。

 さて、ナットに戻りますが、これが、なかなか外れない・・・(~_~;)。30数年経っているってのもあるのでしょうが、カッターで境目に切れ込みを入れ、横から叩いても、ペンチで引っ張ってもぬけない・・。で、数日格闘した末に・・・

 上のような無惨な姿で外れました。材質はプラスチックですね。ナットの埋まっていた側面が、ざらざらと言うかデコボコというか、接着剤と癒着しちゃってるような感じでした。ちなみに新しいナットは牛骨です。

 そして、新しいナットの取り付けですが、新しいのは、厚みがちょいと足りない。

 で、上の様に爪楊枝をカッターで薄く削って・・・。

 ヘッド側に挟みました。上は仮止めで、この後高さも削って、ラッカーで覆いました。



 ナットを外す時に、カッターで切り込んで溝をいためてしまった所などは、エポキシで埋めて、上のような仕上がりです。挟み込んであるのは、もともと爪楊枝ですので、今度外すときは、ここにカッターで切り込みを入れてやれば、すんなり外れると思われます。

 さて、ここからフレットの仕上げと調整になりますが、アリアのもそうですが、この手のストラトを弾いてて思うのは、1弦がチョーキングで音詰まりしないくらいまでサドルの高さを調整すると、1弦の弦高がやたら高く感じてしまう・・・、という事。これは、もともと指板のアールがわりときつめであるのが原因、とは思うのですが、たまにストラトでも調整が良いのか、低い弦高のまま、チョーキングでの音詰まりもないのに当たったりしますねぇ。
 調整やフレットの擦り合わせで、いい感じに持って行けるのだろうか?やってみよう!という事でしばらく試行錯誤です。

 弦高をわざと低めにして、音詰まりが出る所を探って、そろりそろりと、擦り合わせをしました。定規を当てても出っ張ってないし、すり合わせ用の平ヤスリも引っかからない所でも、音詰まりが出たりしてますねぇ。ん〜、難しい。

 自分のギターだと、しばらく弾き倒して、フレットが適度に擦れてから、少しずつ部分的に直したりする事はよくありますが、フレット打ってからすぐにこの手の追い込みってのは、あまりやらないので、なかなか難しいです。

 で、数週間ポチポチと弦を張っては確認、外してちょっとだけ修正を繰り返して、1弦 12フレットで、フレットの頭から弦まで 1.6〜7mm って所まで追い込みました。おーやればできるんだねぇ。でもこれってけっこう根気のいる作業ねぇ。うちにある他のギターもこれくらいやれば、もっと良いセッティングに追い込めるのかなぁ?。

 

 さてさて、ではこのヤマハのその他の部分を見ていきましょう。

 ボディーは4ピースのようです。アリアみたいに表裏の張り合わせは無く、真っ当なボディーですね。

 電気系はアリアと似たり寄ったりですが、P.U. はちょっと安っぽい感じですねぇ。抵抗値は、F&C = 5.5kΩ R = 6.5kΩくらいで、リアだけちょいと巻き数が多いのかな?

そしてボディーの加工ですが・・・

 なんともアバウトなボディーのザグリですねぇ。ハムバッキングを付けれるほどの大きさはないけど、直線的に簡単に加工してあるって感じです。

 それと裏面を見て一目でちがう・・、と思ったのが、

 ネックジョイントのプレートが縦長?細い?です。ネックエンドの幅は、56mm 程でアリアと変わりませんが、ネジの位置が内側に入っていて、その分プレートも細長くなっているようです。


 

 ではでは、あらためてこの2本を比較して参りましょう。

 

Aria Pro 2 StageCaster MATSUMOKU
YAMAHA SR 400
製造年
1976年
1976年〜1980年の間
ボディー
表裏張り合わせの5?ピース
普通の4ピース
ザグリはどっちもどっち、って感じですかねぇ。
ネック
ヘッドに張り合わせありのワンピース、張りメイプル指板、デカヘッド
ストリングガイドの位置

アリアの方がナット寄りに付いています。

ナット幅
42mm
ペグ
70年代のペグと言うと、このタイプですね。精度はあまり良くない?ので、今はこのタイプが新品で付けられる事は、まず見ないですが、このタイプの名称は、なんていうんだろう?(^_^;)
ヤマハの方がピカピカで奇麗ですねぇ。つまみの形状はアリアのまるっこい方がフェンダーっぽいかな?
ネックジョイントプレート

たぶん左のアリアが標準的なサイズで、ヤマハは細長い

ブリッジ

弦間ピッチ 11mm

弦間ピッチ 10.3mmくらい

写真のように作りはだいぶ違いますね。
アリアはだいぶメッキが浮いて来ちゃってますが、ヤマハは本当に 70年代物か?と思うほど奇麗ですねぇ。
ピックアップ
さあ、では音の聞き比べをしてみましょうかね!
リア クリーン
センター クリーン
フロント クリーン
軽く歪ませて
 アリアの方がパワーがあり、アタックも強烈ですが、ヤマハも悪くないですねぇ!

 ヤマハの方がアタックの暴れはあまりないですが、ちゃんとストラトらしい音をしております。特に歪ませちゃうと、アリアとそれほど違いは無くなります。むしろ暴れない分、扱いやすいと思います。アリアはピッキングの強弱でアタックが大幅に変わるので、けっこう大変。

 弾き心地としては、フレットが新品って事もあるのでしょうが、ヤマハの方が弾きやすく感じます。アリアはそのピッキングに敏感ってのもあるけど、フレットも減りにバラツキがけっこう出て来てますし、弦高も高めですしね。アリアもフレット打ち直そうかしらん?(^_^;)。

 

 と言った所で、ストラト対決は終了です。

 全体的な印象としては、一応アリアの方がストラトってもののコピー度は高いのかもしれないけど、ピックアップ以外はヤマハの方が木材も塗装もちゃんとしている、って言う感じですね。どちらもバッタもんと言えばバッタもんで、現在の韓国や中国産の方が、もっと全うなのかもしれませんが、音はどちらも古き良きストラトの音で、その後パワーが上がって、ノイズが減って太くなって・・・、と言った進化を遂げる前の、ちょっと危うげなシングルコイルの音が、とても良い感じです。

 ジャパンビンテージってのは、個人的には 80 年代の抜群にコストパフォーマンスが良くて、今じゃその値段では作れないでしょって言うヤツを言うのだと、私は思っていますが、この 70年代のちょっとバッタもんのコピーモデルは、ジャパンオールドって所でしょうかね!

 でもやっぱり私には、この大きさなのに 21フレットしかないのは・・・、厳しいですなぁ。(~_~;)。

2013.06.17


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