インターネットとMP3

 

 今や大ブレイクのMP3。やれネットでの音楽配信だ、携帯型プレーヤーだ、違法コピーだと、ニュースも事欠かない昨今ですが、私達、音を制作しているものにとっては、このMP3(MPEG Audio Layer-3)というファイル形式の登場は、とってもありがたい、夢のような魔法の道具でありました。
 

 MPEGの音声圧縮っての自体は、確か昔からあったんですよね。今のMP3と同じものかどうかは解らないのですが、FPU無しのLC3を使っていた頃、MPEG圧縮の音声ファイルって言うのをネットからダウンロードして、解凍した所、半日くらいかかった記憶があります。

 

 放送関係での音声は、6mm(1/4インチ)2Trackのオープンテープ、と言うのが確固たるスタンダードなメディアでしたが、映像の編集スタジオでの、デジタル&ノンリニア環境の普及により、コンピュータのサウンドファイルでの搬入の方が、簡単確実ハイクォリティな物となりました(単にインポートすればいいだけですからねぇ、音質の劣化も無いし)。6mmテープのデッキなんか導入して無い、CG屋さんにも手軽に完パケクオリティの音声をわたす事もできるようになりました。

 

 音声ファイルと言うやつは、44.1kHz 16bit STEROというCDと同じフォーマットの場合、1分間で約10MBのファイルサイズになります。うちはCM中心なので15"とか30"とかの長さですが、それでも差し換えやら別バージョンやらとあると、納品するファイルサイズは、結構な量になります。

  と言う事で、搬入するファイルはMOに入れてわたす、遠隔地の場合は宅配業者に届けてもらう、という形態でした。

 でも、こっちもパソコンあっちもパソコン使ってるわけでしょ。しかも昨今のこの状況、インターネットにも繋がってたりするわけですよ。だったら、インターネットを通してダイレクトにやり取りした方が・・・と思いますよね。しかしインターネットに繋がってるとは言え、ほとんどはまだダイアルアップの接続、自社サーバーたててるような環境なら、10MくらいがんばってFTPしますが・・・・ん〜

  

 そう、ファイルサイズが問題だったのです。

 

 えっ?圧縮して送ればいいじゃん、と思われるかもしれませんが、音声ファイルって、通常の可逆圧縮ではほとんど効果が無いのです。9割くらいのファイルサイズになればいい方ですね。 

 そこでMP3です。"CDクオリティのままファイルサイズは1/10"という謳い文句の真偽はともかく、かなりの圧縮が効く事は確かです。うちのようなCM環境では、メールに添付して、ほいほいと送る事ができるサイズになります。MOのメディア代が浮きます。宅配便の料金が浮きます。電話代はかさみます。(^_^;) 

 MP3の解凍(デコード)には、優秀なフリーのソフトがたくさん出回っていますので、納品先にはそれらのソフトを用意してもらえばOKです。また、ほとんどのソフトは解凍せずにMP3のまま再生する事ができますので、すぐに内容の確認ができます。QuickTimeの現在のバージョンでもMP3はサポートされていますので、再生、解凍ができます。

 一方圧縮(エンコード)ソフトの方は、'99年の春くらいまでは、フリーの物も手に入りました(Mac版の話し)が、現在は市販のものしかないかな?まぁ、MP3のブレイクのおかげで、この手のソフトはどこのパソコンショップでもおいてますので、すぐ手に入ります。うちでは"SoundJamェ MP"というソフトの英語版を使っています。海外のサイトからダウンロードで購入できます。

 

 いい事尽くめのMP3ですが、注意点もあります。MP3の圧縮は不可逆圧縮です。完全に元のファイルと同じにはならないと言う事ですね。圧縮で一旦落ちた音質は2度と元に戻りません。

 "CDクオリティのままファイルサイズは1/10"と謳っているMP3ですが、圧縮ソフトのデフォルトの設定は、たいていmonoで64kbit/s、stereoで128kbit/s となっています。この設定だと確かにファイルサイズは1/10ほどになりますが、「CDクオリティ」という部分は、はなはだ疑問だと思います。一般ユーザーのほとんどは、パソコンまたは携帯MP3プレイヤーのヘッドホンが再生環境なので、問題ないのかもしれませんが、この設定だと高音域は確実に音が変わります。

 うちでは、monoで128kbit/s、stereoで192bit/sぐらいを常用しています。これでも1/7〜8位まで圧縮できますので、問題ないでしょう。ほとんどのソフトでこの値は変更できますので、セッティング次第ですね。

 また、原因は良く解らないのですが、ごくごく短いファイル(1〜2秒)だと、先方で解凍できない、と言われる事があります。そう言う時は、無音の余白をつけるとか、圧縮しないファイルで送るとかで、解決できます。

 

 完パケクオリティの納品に付いて書いて来ましたが、ディレクターや営業さんに確認のため聞いてもらう、てな場合はもっとクオリティを落として、ファイルサイズを小さくした方がいいですね。この業界、モバイルでノートパソコン持ち歩いているような方も少なく無いですから、メールで音声ファイルを送るのはとっても有用な手段です。また、このような場合は、MP3にこだわらず、QuickTimeのQ-Designの圧縮なども、良いとおもいます。QuickTimeさえ入っていれば、余計なソフト無しで聞けますからね。

 

 

 

 さてさて、音が送れるんなら次は映像!と来るのが人情・・?(^_^;)

 実際、映像のやり取りも始まっています。ただ、映像のファイルサイズは音の比じゃ無いのは、事実です。ここでも圧縮フォーマットが鍵を握ります。

 QuickTimeベースのノンリニア編集環境だと、通常のQuickTimeMovieにすぐ書き出せる様ですね。そこで、画面サイズ320*240ぐらいで、QuickTimeのsorenson videoで書き出すと、15"CMぐらいはなんとかインターネットで送れるサイズになりますね。コマ数も落としちゃえば、もっと小さくなりますが、映像を送る必要がある時ってのは大抵、微妙なタイミング合わせが必要な時が多いので、29.97fpsのままの方が、良いでしょうね。

 

 インターネットでやり取りされる情報量は、どんどん大きくなっています。今の電話回線でのやりとりなんて、きっと過渡的なものでしょう。今にきっと高速回線で常時接続と言うのが当たり前の環境がやってくると思います。そうなって数十MBのやり取りが当たり前になっちゃえば、もっともっと映像や音が気軽に飛び交うようになるでしょうね。

 2000.02.03

 

 

  

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